ChatGPTを家庭学習に使うときの「具体的な活用例」10選【小学生向け】
生成AI、特にChatGPTやGeminiのような対話型AIは、家庭学習でも簡単に使えるようになりました。
一方で、それらのAIを
- 「答えを教えてくれる便利ツール」で終わらせてしまうのか
- 「考える力や探究心を伸ばす道具」として活かせるのか
ここには大きな差があります。
私は教育大学で教育方法学を研究しながら、
「子どもの学びをどう設計するか」という視点から生成AIを見ています。
この記事では、その立場から
- 文科省の生成AIガイドライン(2024年版)
- ヴィゴツキーのZPD(発達の最近接領域)や足場かけ(Scaffolding)
- メタ認知・自己調整学習・探究学習
といった理論を背景にしつつ、
小学生の家庭学習で実際に使えるChatGPT活用例 10個
+ AIに任せすぎないためのポイント
を具体的なプロンプト付きでまとめていきます。
私の専門分野である AI × 教育方法の観点から、
海外での実践例も基にしたChatGPTの活用例をご紹介いたします!
0. まず押さえたい「3つの前提」
活用例に入る前に、「最低限ここは守りたい」という前提を整理しておきます。
前提①:アカウントは「保護者名義」で、リビングで一緒に使う
- 小学生本人にアカウントを作らせない
- 保護者のアカウントを、保護者の端末で
- 使う場所は基本「リビングなど家族のいる場所」
これは
- 利用規約上の問題
- 安全面(変な出力への即対応)
- 教育的に「Human-in-the-Loop(親がループの中にいる)」
の3点から、とても重要なのです。
前提②:個人情報・友だち情報は入れない
- 氏名・住所・学校名・電話番号
- 顔写真や制服、家の外観が分かる画像
- 友だちや先生の具体的な話
こういった情報は入力しない、という約束を親子で共有します。
前提③:「AIも間違える」を最初に教える
ChatGPTは「なんでも知っている先生」ではなく
「もっともらしく話すけど、平気で間違えるロボット」 です。
だからこそ、
「AIが言ったことを、教科書や本でもう一度確かめる」
というファクトチェックの習慣づけが、学びそのものになります。
1. 教育方法学から見たChatGPTの位置づけ(ざっくり)
難しい理論は脇に置いて、家庭で意識しやすいポイントだけ抜き出します。
- ヴィゴツキーのZPDと足場かけ
→ 子どもが「自力ではギリギリできないこと」を、ヒントで支える役割 - メタ認知
→ 「自分はどこまで分かっているか/どこが分からないか」を自覚させる - 構成主義・探究学習
→ 知識を「教えてもらう」だけでなく、「自分で問いを立てて探す」
ChatGPTは、「答えを一方的に教える存在」ではなく、
ヒントを出したり、問い返したりして、
子どもの考えを引き出す「足場」になる存在
として使うと、教育方法学的にも相性が良くなります。
2. ChatGPT家庭学習の具体的な活用例10選
ここからが本題です。
それぞれの活用例について、
- 想定学年・教科
- 教育的ねらい(どんな力を伸ばしたいか)
- 保護者が入力するプロンプト例
- アナログ活動との組み合わせ
- 「任せすぎ」を防ぐポイント
までセットで紹介します。
①【算数】「なんで間違えた?」を一緒に考える誤答探偵
想定学年:小3〜小6
教科:算数
ねらい:メタ認知・誤答分析(自分の考え方を振り返る力)
こんなときに使う
- ケアレスミスが多い
- 間違えても「なんで間違えたか」がよく分かっていない
プロンプト例(保護者が入力)
小学生の算数の家庭教師としてふるまってください。
子どもが『12−5=8』と間違えました。
- 子どもがそう考えた“ありがちな理由”をいくつか想像してください。
- 答えを言わずに、『どこで考え方がずれたか』に気づけるヒントを、
質問形式で3ステップくらいで出してください。
説明は小学3年生にも分かる言葉でお願いします。
※実際に「子どもが書いた式」や「途中の考え方」も一緒に貼るとよいです。
アナログ活動との組み合わせ
- 子どものノートを一緒に見て、
ChatGPTのヒントに合わせて赤ペンで「ここで考え方が変わった」印をつける。
任せすぎないポイント
- AIに「どこが間違いか教えて」と聞かない
- まず子どもに「自分で間違い探し」をさせてから、AIのヒントを見る
②【国語】読書感想文の「壁打ちパートナー」
想定学年:小3〜小6
教科:国語
ねらい:思考の外化・構成力(何を書きたいかを言語化する)
こんなときに使う
- 「何を書けばいいか分からない」と手が止まりがち
- 本の内容のあらすじだけで終わってしまう
プロンプト例
あなたは小学生向けの読書感想文をサポートする家庭教師です。
本は『ごんぎつね』です。
いきなり作文を書かずに、
- 一番心に残った場面
- そのときに自分がどう感じたか
- 自分の経験との共通点
などを、子どもに一つずつ質問して、答えを引き出してください。
答えを否定せず、『どうしてそう思ったの?』と深掘りする質問も入れてください。
小学4年生向けのやさしい言葉でお願いします。
アナログ活動
- ChatGPTとの対話の中で出てきた「キーワード」を、
子どもが付せんやノートに手書きでメモする。 - それを並べ替えて、作文の構成を作る。
任せすぎないポイント
- ChatGPTに「本文を書いて」と頼まない
- あくまで「アイデア出し」「構成」までに限定する
③【社会】歴史人物にインタビューするタイムスリップ学習
想定学年:小5〜小6
教科:社会・歴史
ねらい:視点取得・歴史的思考(人物の立場で考える)
プロンプト例
あなたは織田信長になりきってください。
私は小学6年生で、社会の授業のためにインタビューをします。
- どうして戦いばかりしていたのか
- なぜあのような政治をしようと思ったのか
など、私が質問するので、当時の気持ちや考えを、
小学生にも分かる言葉で、でも少しそれっぽい口調で答えてください。
1回の返事は短めにして、会話を続けられるようにしてください。
アナログ活動
- インタビュー内容をもとに、「○○新聞」を手書きで作成。
- 「もし自分が○○だったら」という作文につなげるのも良いです。
任せすぎないポイント
- AIの話を鵜呑みにせず、「本当にそうかな?」と教科書で確認する時間を必ず取る。
- 「AIの信長」と「教科書の信長」の違いを親子で話題にする。
④【理科】おうち実験プランナー
想定学年:小4〜小6
教科:理科・総合
ねらい:探究学習・仮説形成
プロンプト例
家にある安全なもの(お酢、重曹、食器用洗剤、水など)だけを使ってできる、
小学5年生向けの簡単な実験を3つ提案してください。
それぞれについて、
- 何が分かる実験か
- 必要な道具
- 手順(5ステップ以内)
を教えてください。
危険なものは絶対に使わないでください。
アナログ活動
- 実際に実験をやってみて、ノートに予想と結果を書き分ける。
- 実験後にもう一度ChatGPTに「この結果になった理由」を聞いて、考察を深める。
任せすぎないポイント
- 実験の可否の最終判断は必ず保護者が行う(AIの提案をそのまま信じない)。
- 「なんでこうなったと思う?」と子どもに先に考えさせてから、AIに質問する。
⑤【英語】AI英会話で「お店屋さんごっこ」
想定学年:小4〜小6
教科:英語
ねらい:発話への心理的ハードルを下げる・簡単な表現の習得
プロンプト例
あなたはアメリカのスーパーの店員さんです。
私は小学5年生の日本人の子どもです。
英語でお買い物ごっこをしてください。
- ゆっくり話す
- 簡単な単語だけを使う
- 私が間違えたら、日本語でやさしく教えてから、正しい英語の言い方を教える
というルールでお願いします。
アナログ活動
- 会話で出てきたフレーズを、カードに手書きしてミニフレーズ集にする。
- 家族相手に「店員さん役」を実演してみる。
任せすぎないポイント
- 翻訳や長文作成をメインに使わず、あくまで「練習相手」として使う。
- 「意味を理解して話しているか」を日本語で確認する。
⑥【全教科】「小学1年生にも説明して」=本当に分かってるかチェック
想定学年:小4〜小6
教科:全教科
ねらい:概念理解・メタ認知
プロンプト例
これから、子どもが『民主主義』について説明します。
その説明を聞いて、
- 小学1年生でも分かるように言い換える
- たとえ話(お菓子の分け方など)を1つ加える
という形で、分かりやすく直してください。
子どもの説明:『(ここに子どもの説明文を貼る)』」
アナログ活動
- ChatGPTが作った「たとえ話」をもとに絵やマンガにする。
- きょうだいや保護者に向けて「先生役」で説明してもらう。
任せすぎないポイント
- 先にAIに説明させない。「子どもが先、AIはあと」を徹底する。
- 「どこが自分の説明と違うと思う?」と差分を意識させる。
⑦【算数】「推しキャラ」が出てくるオリジナル文章題ドリル
想定学年:小2〜小4
教科:算数
ねらい:動機づけ向上・ドリルの個別最適化
プロンプト例
小学3年生向けのわり算の文章題を5問作ってください。
条件:
- すべての問題に『○○(子どもの好きなキャラ名)』を登場させる
- 1問あたりの文章は2〜3文程度
- 問題の答えは最後に別でまとめる
アナログ活動
- プリントにして印刷し、ふつうのドリルと同じように紙で解く。
- 気に入った問題は「自作ドリル」としてファイルに綴じていく。
任せすぎないポイント
- AIに途中式まで書かせず、「問題だけ」を出させる。
- 答え合わせは保護者が行うか、AIの答えを見せる前に一緒に検算する。
⑧【国語】語彙力アップの「言い換え」ゲーム
想定学年:小3〜小6
教科:国語
ねらい:語彙の拡張・表現力
プロンプト例
小学4年生向けの国語の学習を手伝ってください。
『楽しい』という言葉を使わずに、
運動会が楽しかったことを表す文を3つ作ってください。
それぞれ、
- 走っているとき
- 友だちと話しているとき
- お弁当を食べているとき
の場面を想像して書いてください。
アナログ活動
- 子ども自身にも「楽しい」を使わない文を考えてもらい、
ChatGPTの例と比べてみる。 - 気に入った表現を言葉カードにしてストックする。
任せすぎないポイント
- 最初からAIに頼らず、1つは子ども自身で例文を作ってからAIに追加案を出してもらう。
⑨【社会・道徳】AIをディベートの相手にして考えを深める
想定学年:小5〜小6
教科:社会・道徳・総合
ねらい:批判的思考・多面的な見方
プロンプト例
『学校にマンガを持ってきてよいかどうか』について、
あなたは『反対の立場』になってください。
私(小学生)は『賛成の立場』で意見を言います。
1回のやりとりでは、
- まず私の意見を聞く
- それに対する反対意見を、
小学生にも分かる言葉で、感情的にならずに述べる
という流れでディベートの相手をしてください。
アナログ活動
- 話し合いのポイントをメモし、
「賛成の意見」「反対の意見」を左右に書き出すチャートを作る。 - 最後に「自分はどう考えるか」を短く文章にする。
任せすぎないポイント
- ゴールは勝つことではなく、「いろんな考え方がある」と理解することだと伝える。
- AIの意見を「正解」として扱わないように注意する。
⑩【自律学習】マイ・スケジュールコーチとして使う
想定学年:小4〜小6
教科:全教科(自己調整学習)
ねらい:学習の見通しを立てる・時間管理
プロンプト例
小学生の学習コーチとしてふるまってください。
私は今から1時間で、
- 漢字ドリル2ページ
- 算数の宿題1ページ
- ピアノの練習10分
をしたいです。
無理のない順番と時間配分を考えてスケジュールを作ってください。
小学5年生向けのやさしい言葉でお願いします。
アナログ活動
- 出てきたスケジュールを紙に書き写し、チェックボックスをつける。
- 終わったら自分でチェックを入れていく。
任せすぎないポイント
- 毎回AIに決めさせるのではなく、慣れてきたら
「今日は自分でスケジュールを作って、最後にAIに見てもらう」という流れに移行していく。
3. 「任せすぎない」ための親の声かけ3つ
最後に、どの活用例でも共通する保護者のスタンスをまとめます。
① AIに聞くのは「答え」ではなく「考え方」「ヒント」
- NG:「答えを教えて」「この問題を解いて」
- OK:「どう考えればいい?」「ヒントを少しずつ出して」
② 「AIの答え」より「子どもがどう考えたか」を評価する
- 「早く終わったね」より
「どこで悩んだ?どうやって解決した?」とプロセスを聞く。 - ChatGPTを使ったときは
「AIのどの説明がいちばん役に立った?」と振り返りの会話をする。
③ AIが間違えたときこそチャンス
- 「AIも間違えるね」「どこが変だと思う?」
- 「どうやって本当かどうか確かめられるかな?」
こうした問いかけは、そのまま情報リテラシー教育になります。
おわりに:ChatGPTは「考えるきっかけ」を増やす道具
ChatGPTは、使い方しだいで
- 子どもの興味関心に合った足場かけをしてくれる家庭教師
- 考えを言葉にする壁打ち相手
- 親子の対話を増やす第三の会話相手
にもなり得ます。
ただし、それは
「答えを全部任せる」のではなく、
「一緒に考えるための道具」として使ったときだけ。
教育者の立場から言えば、
主役はいつも子ども自身の思考と経験です。
この記事の10個の活用例を、そのまま「正解」として使うというより、
ご家庭ごとにアレンジしながら、
「うちの子の場合、どんな使い方なら“考える力”を伸ばせるだろう?」
と試行錯誤してもらえると、AI時代の家庭学習がぐっと豊かなものになるはずです。